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相続法改正・配偶者に対する居住用不動産の生前贈与は、原則、特別受益として計算しない規定の条文化

更新日:2018年12月10日

配偶者に対する居住用不動産の生前贈与は、原則、特別受益として計算しない規定の条文化

(1)改正理由

具体的相続分の考え方

 生前に特別の贈与をうけていた相続人は、相続分の前渡しを受けたものとして、特別受益があるとされます。そして、特別受益を受けたものは、相続財産からの取り分が減らされる制度となっています。たとえば、配偶者に対して居住用不動産を生前贈与していた場合を見てみましょう。

 添付資料3で説明しましょう。・・・。

 もちろん、こういう計算をするのはもめたときですよ。こんなわずらわしい計算をして未亡人をいじめるのはろくでもない子供です。しかし、現実には、実の親子でもまれに起こりますし、前妻の子と後妻という関係にもなれば十分に起こりうる話です。

 こういう仕組みで具体的な相続分を計算するものですから、生前に、居住用不動産の贈与を受けていた配偶者には特別受益があるとされ、実際の遺産分けでは取り分が少なくなる。

配偶者に対する贈与税の特例は相続争いでは意味がない

 そうすると、なんのために、生前贈与したのかわからない。

 大方、こんな話でしょ。税理士がこう勧めたんでしょ。「2000万円までなら配偶者への居住用不動産の贈与には贈与税がかかりません。資産を減らせば相続税対策にもなりますよ。それに相続争いが起こっても確実に奥様の住居を確保できますよ。もういいことづくめです。」

 税理士にそう勧められてやってみたんでしょ。で、贈与税の申告では税理士さんに数十万円支払ったんでしょ。おまけに、贈与でやるもんだから、数十万円の登録免許税も払ったんでしょ。相続登記でやれば安く済んだのに。さらに、不動産取得税も数十万円払ったんでしょ。相続で取得すればゼロなのに。あと、何だか知らないけど、無愛想で偉そうな司法書士にも十万円払ったなあ。顔も思い出せないや。(笑)

 これだけ金をかけても、配偶者に対する居住用不動産の贈与は、相続争いではまったく意味がない。そういう事態が起こる。

 これでは、あんまりだ。贈与したつれあいだってこんなところで不利に考慮されるなんて想像もしない。人情として、通常、そんなつもりはないんですよ。相続分とは別に老後のすみかに困らないように渡しているんです。それに、長年、夫の財産形成によく貢献してくれたなあ、相続とは別のこれはおまえのものだ、というつもりで渡しているんです。

 そういうわけで、配偶者への生前贈与に関する人情に配慮し、また税法上の特例を活かすためにも、原則、居住用不動産の贈与は、特別受益であっても、具体的相続分の計算では除外することにした。それが、特別受益の持ち戻し計算免除の意思表示の推定規定なんです。

 持ち戻し計算免除の意思表示というのも聞きなれない言葉です。弁護士の世界ではよく使うものです。かりに特別受益だと認定されても、それを実際の相続では考慮するな、という意思表示があった、それが持ち戻し計算免除の意思表示です。

 こういう意思を遺言書や手紙に書いておいてくれればいいのですが、通常は、そんな制度知らないものだからみんな書かない。そこで、条文化して、原則、意思表示があったと推定することにしたんです。

(3)内容・要件

 条文の内容は、こういうものです。婚姻期間が20年以上の夫婦が、配偶者に対し、居住用不動産を生前贈与したときは、原則、相続では特別受益と認定されるんだけど、特別に、そういう取り扱いはしないと意思表示をしていたものと推定されます(新法903条4項)。

(4)注意点

 注意点は、対象財産は居住用不動産に限られるというところです。

 それから、注意してほしいのは、そもそも、配偶者に対する居住用不動産の生前贈与は、実は、相続税の節税効果はあまりありません。

 配偶者の税額軽減の存在、特定居住用宅地等の減額の特例が使えなくなるなどの理由で、税理士の謳い文句ほどには効果がない。

 「あれは、奥さんの気持ちを鎮めるためだけのものだ。」(税理士・花村一生)というのが本当のところです。みなさん、優秀で正直な税理士さんに巡り合えるといいですね。

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